芦田みゆき「南南東」+クラヴィコード

ここのところ気温がぐっと下がって、秋らしくなってきた。

先週は表参道画廊で、芦田みゆきさんの写真展の中で、クラヴィコードを弾く。

数年前に芦田さんから自作のスライドムービーに、クラヴィコードの植物文様を使わせてほしいという依頼があり、それが今回のイベントのきっかけ。芦田さんは、もともと詩をお書きになっていたが、ある時点から写真に転向され、独自の視点から作品を発表されている。

「南南東」は、鮮烈な赤が走ったというご自身の体験から導かれた写真集だが、そのタイトルはご自身の以前の詩から取られた。

地の果てを思わせる黒い地平線上に、オレンジ系の赤いヴェールをまとった女性は、幻想的な組み合わせ。立っているのもやっとという猛烈な風の中での撮影だったようだが、どこか不思議な静謐さを漂わせている。その「南南東」をはじめ、過去のスライドムービーを映写して、同時にクラヴィコードを演奏するという試みだった。

哲学者の稲垣諭さんがおっしゃっていたが、芦田さんの感覚は、当たり前の人間が当たり前に感じるもののよりも手前、もっと原始的な感覚だとのこと。それが藤枝守さんの植物の生体データをもとに作られた音楽と、楽器構造的にもっとも原始的なクラヴィコードが、何か面白い組み合わせのように思える。音楽以外の芸術と交流できる機会はそう多くはなく、とても幸せな時間だった。

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