京都薪能・平安神宮

平安神宮で京都薪能を観る。日が沈みかけた夕景から薪に火が灯り、空が少しずつ藍に染まっていく。薪から立ち上る煙の仄かな香り。巨大な神殿を背に、竹を柱に誂って作った能舞台が時空を超えた錯覚に誘う。観客は数千人はいたのではなかろうか。壮大な図柄だ。

やがて笛、囃子。これは生音らしい。さすがにシテ、ワキは拡声している。電灯も使っているが、雰囲気を壊すほど明るくない。昔は薪の火のみの灯りで演られていたとつい想像をたくましくする。演目は「二人静」。静御前の霊が菜摘女に憑いて、神職に自らの罪深さを弔ってもらおうとする。神職は本当に静かどうかを確かめるために舞を所望する。すると憑依した菜摘女とともに霊も現れて二人で頼朝の前で舞ったであろう舞を舞う。

小一時間の演目だが、濃厚で妖艶。時候も暑くも寒くもなく、風も穏やか。帰路は月も鮮やかだった。奇跡的な環境を鳥肌を立てながら有難く味わった。

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