当世音楽の連チャン

土曜日は両国門天ホールで田米開文香のリサイタル。野沢美香、平石博一、鈴木治行と日本人の3作品を前半に後半はドナトーニの大作「フランソワーズ変奏曲」。

たいへん真摯に作品に取り組み、演奏もよく準備されていた。総じてヴィジュアル的イメージが浮かぶ作品が多く、ドナトーニなどは久里洋二のアニメーションを思い出した。

野澤さんの曲は調律の順序に従った音と、シューマンのフレーズがミックスされたもの。平石さんの曲は田米開さんが「空をイメージして弾いた」と言う通り、雲が流れるようなミニマル的な作品。鈴木さんの曲は開始のフレーズに異物が混入してきて、その異物が増えていって反転してしまうようなこれもヴィジュアル的に面白い曲。

田米開さんは東邦の卒業生でスタンスを次第に当世の音楽にフォーカスしてきており、今後の活躍が楽しみ。


日曜日は松濤サロンで大井浩明さんのPOCシリーズ。今回はカーゲル。カーゲルといえばティンパニに奏者がダイヴする曲で有名だが、たしかにアイロニックな笑いの要素があって面白い。メトロノームと一緒に弾く「MM51」は途中足でメトロノームを傾けてリズムを歪ませたり、突然奏者が笑い出したりという飛び道具も。大井さんが最後に「寒い日に寒いパフォーマンスで・・・」なんてコメントしていたが、そのあたりだろうか。または催眠にかけるかの如く延々と続く静かな音たちのとりとめのなさだろうか。響き的に惹かれる瞬間もあるのだが、どこか集中できない、こんなに落ち着かない静けさも珍しいなあなどと思いながら聴いていた。しかし晩年の曲はヒナステラを髣髴とさせるような場面や、アルゼンチンのリズムを思わせる場面が多くなり、やはり血なのだろうかと思った。大井さんの師匠のカニーノもカーゲルを弾いたというが、師匠ゆずりのシニカルさがハマっているかも知れない。

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