中山靖子先生ご逝去

恩師である中山靖子先生が16日、93歳でお亡くなりになりなった。思えば中学2年生の終わり頃、先生の門を叩いたことが僕のその後の人生を決定した。ただ何となくピアノを弾いていた僕が、専門的に勉強することがどういうことかを思い知り、そのまま現在まで来てしまった。

まず初対面で圧倒されたのは、先生の形容しがたいほどの品格だった。そのとき「上手くしてあげます」とおっしゃってくださったのをよく覚えている。1年後、先生のもとで勉強して、自分が別人のように変化を遂げたように感じた。東京芸大付属高校の受験は、4次試験まで残ったが最後に落ちた。しかし、このペースで勉強を続けなくてはいけないと思った。その1年後に芸高を受け直し、何とか入ることができた。以来大学、大学院、ドイツ留学まで先生のお世話にもなった。

ギーゼキングに師事した唯一の日本人。無駄を省いた技術、楽譜に書かれていることを大切にした解釈、そして華美に走らず、一音一音が美しい粒の揃ったタッチ。靖子先生のお陰で、これらの素晴らしさを肌身で感じることができた。心から感謝しています。ご冥福をお祈りします。

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2013年靖子先生を囲む会で


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