カンフーシューズ

日曜日に植村泰一先生の傘寿記念コンサートがあった。横浜みなとみらいホール、モーツァルトのソナタを3曲。フルートは初代ルイロット1871年、フォルテピアノはヨハン・ゲオルク・グレーバー1820年。19世紀同士の楽器。ピッチや音色の相性がいいのは、前回、東京文化会館のリサイタルでも確認できたが、今回は近代的な響きのみなとみらいホール、また違った柔らかさが感じられた。

いわゆるダンパーペダルは今回、一回も使わず、モデレーター2種類とウナコルダを使った。ペダル間の間隔が狭く、普通の靴では踏みにくい。いっそ脱いで演奏しようかと思っていたら、スタッフが中華街にカンフーシューズがあるかも知れない、と言ってくれて、わざわざ買って来て下さった。これは足のサイズにフィットして、はるかに踏みやすい。スーツでもあまり違和感なかった。

ホ短調のソナタ(KV304)のメヌエットで使ったモデレーターはクラヴィコードを思わせる音色で、曲想に合っていたと思う。スタッフからは「隠し球よかった!」と言ってもらえた。しかし、もしかしたら、この楽器の実力はサロンのような小さな部屋でもっとも発揮されるかも知れない。スタジオで練習したときの親密な音色も捨てがたいのだ。モダン・グランドピアノではホールの響きと合わせてなんぼだというのに。

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