V-Piano Grand

縁あってローランドの浜松研究所に伺い、いま話題のV-Piano Grandを試弾させていただきました。

生粋のデジタル楽器ですが、大胆にクラシック層にアピールしてきたこの楽器、実に面白い。何が面白いか。


サンプリングを捨てた!ーーこれまでのデジタルピアノの主流だったサンプリング音源を止めて新しい音作りを始めた。モデリングというこの方法は、音を形成するさまざまな要素を個別に作って重ね合わせるもの。弦素材、ハンマー形状などを仮想的に作り、それを鳴らした音を弦1本1本の単位で作り込む。その上に響板の響きやアクションのノイズ、押弦共振やダンパーのない高音部の共振までつけていくという凝り方。


サンプリングを捨てたことにより、可能性が広がった。ひとつひとつのパラメータをコントロールできる強みを生かして、3本の弦の音高の揃え方、ハンマーの硬さ、振動音などを個別に調節できる。さまざまなコンディションの楽器を仮想的に作ることができ、自分好みに楽器を変貌させることができる。


ピアノの奥行きが恐ろしく長い楽器や、銀線を張った楽器などがVanguard(先駆)ピアノとしてプリセットされている。実際に弾かせてもらったが、それぞれに特徴をもったサウンドになる。


僕は自分の記憶を頼りに、ある特定のフォルテピアノの響きを目指してパラメータをいじってみた。フォルテピアノというプリセットサウンドもあるのだが、だんだん自分のイメージに近づいてくる楽しさを味わった。


専門的になるが、ピアノの響きの特徴にインハーモニシティというのがある。弦の縦振動、横振動の兼ね合いで、ピアノの場合高い音になると、ユニゾンが合っていないように聞こえるというもの。通常高い音を少しずつ高めにしてゆく調律が多く、この上げ具合が職人技なのだが、これも調節できるのだ。演奏する曲によって、このあたりを変えたり、もちろん調律も自由に変えられる。アンサンブルのときなども相手によっていろいろな音色を選択することが可能。これは本当にマニアックな楽器だ!

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