あらためて北斎

京都訪問中の友人との会話の中で、若冲や等伯などの話題が出て盛り上がった。なぜかグーグルも今日は若冲だった。そういう刺激のなか、近所の文化博物館で北斎展を開催しているのを思い出し出かけてみた。


奇行や大胆な構図で知られる北斎だが、あらためて、面白い! 空、雲、霞、樹木、岩、そして水の表現に揺るぎないものを感じる。写実と幻想のはざま。空や陰の部分の紺。そしてそのグラデーションにはなぜかとても心和むものがある。寒色なのに。


その紺と赤茶との組み合わせは、グラデーションも含めれば、もう色の種類はそれだけでよいのではないか、と思ってしまう。「赤富士」などまさにそれ。余談では紺で書かれた文字が白い雲と薄い空の紺に出たり潜ったりしているのは今回初めて知った。


構図の大胆さでは、例えば富獄の中でも「諸人登山」のように富士を巡礼している人々を描いて富士そのものの姿は描かないものや、逆に「上総の海路」のように探さないと富士がわからないようなものまで。また直接月は描かずに水面に映る月だけであったり、画面の半分は滝であったり、霞で風景を分断したりと、とにかく着想が面白く、またそれらが70歳代の仕事であったりするのだ。


ほぼ90歳まで生きた北斎。彼の年譜を見ただけで元気が出た。


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