能の講話会

学部入試もようやく終わり、まもなく春休み。陽気もだいぶ春らしくなってきて、京都もだんだんツーリストが多くなってきた。


16日日曜日、京都国際会館にお能の講話会に出かける。「能の花を語る」と題された定期的に行われている講話会で河村晴道さんによるお話。初めて参加した。

テーマは「朝長」と「隅田川」。どちらも世阿弥の息子、十郎元雅の作と云われている。「朝長」は平治物語をベースにした源氏の悲劇。「隅田川」愛児の死を知った母の悲話で、生の儚さを川に象徴させた作品。

元雅の作品は、音に敏感であるという。

「朝長」では懺法(せんぼう=六根の罪障を懺悔するための法要)という特殊な状況を表現するために、太鼓を何ヶ月もかけて特別な調子に調整していくという。本来張りがあって生気のある音色の太鼓を、わざと淀んだ音色に変えていくという念の入れよう。舞台で太鼓の出番が終わると、普通の状態に戻し、最後の最後に普通の音で打って調子を変えていたことを示すという憎い演出。

「隅田川」でも、我が子の消息を求めていた母が、その死を知りひれ伏して泣く場面で、「鉦鼓」(念仏に使う打楽器)が使われるなど。

また世阿弥と元雅の幽霊観の違い。世阿弥の幽霊は死してなお意志を持つ霊、元雅の霊は現実の人間が捉える幻との解釈でよいだろうか。元雅のリアルな感覚は近世的とも云える。

世阿弥の作品、元雅の作品において、どの修羅能においても戦さを肯定したものがないそうだ。武勇伝がない。あの戦国時代において戦争を否定的に見る芸術。素晴らしいお話だった。


19日に河村晴道さんのお父様、観世流能楽師の河村晴夫さんがご逝去された。心からご冥福をお祈りします。


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京都国際会館


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